今回は100名を超える多くの方々にご聴講いただき、ありがとうございました。

一般の聴講者の方々だけでなく、県立佐倉高校(佐倉市)においても、聴講の機会を設けていただき、興味を持って集まった生徒の皆さんにも真剣に聞いていただきました。

事務局としまして、今回のように皆様に学びの機会を与えることができたことに、大きな喜びを感じるとともに、今後も引き続き、学びの場を提供して参りたいと思います。

今回の講義について、ご興味のある方はぜひ、下部の「第1回佐倉サイエンスアカデミーレポート」をご覧ください。


なお、講義後のアンケートでは次のような感想、コメントをいただいています。

*感想・コメント(一部抜粋)*

・面白かったです!

・植物のパワーを再認識できました。

・植物化学に対する新しい視点が得られたように思います。

・沢山の化合物が植物から作られていたり、植物をもとに合成されており、私たちの生活になくてはならないものでもあるのだと感じました。

・植物を守っていくためのSDGsに対する取り組みも大切だということも、改めて気付かされました。

・かなり嚙み砕いて説明して頂き聞きやすく興味が持てました。生薬の凄さを改めて理解できました。

第1回佐倉サイエンスアカデミーレポート

タイトル:「植物はなぜ薬を作るのか 〜植物は人類と地球を救う〜」

講師:

理化学研究所 環境資源科学研究センター長

千葉大学 植物分子科学研究センター長

千葉大学名誉教授
齊藤 和季 先生

詳細な要旨はこちらの資料をぜひご覧ください!

<講義内容振り返り>

身近な所にある「植物」が、人類にとって「薬」となるような成分を持ち、人類はそれを古くから利用してきた、という事実を知る方は少ないかもしれません。では、「植物」は人類のために、「薬」となるような成分を作っているのでしょうか?実は、そうではなく、植物は長い進化の歴史の中で自身の生存戦略として多種多様な成分を作り出してきました。人類はその成分をお借りし、利用させていただいているに過ぎません。

地球上の炭素循環と生命活動は多くを植物に依存しています。しかしながら、有用な植物種やゲノム配列など、植物に対する理解は不十分であり、まだまだ知られていないことが多くあります。そのため、私たち人類はこれからも植物に対する知識を深め、価値を見出し、地球上で共存していくことが大切です。

<Q&A 講義中にいただいた質問およびそれに対する回答>

Q. 細胞分裂を阻害する植物成分は、植物自身の体内で毒とならないのでしょうか?

それを毒としないようなしくみも備わっているのでしょうか?

A. 細胞分裂を阻害する植物成分はたしかに植物にとって毒になりますが、植物は自分が作る毒に対して抵抗できるしくみを持っています。例えば、細胞分裂阻害のターゲットと別のところに成分を置いておく、ターゲット自身が変異して毒が効かないようになる、などのしくみが知られています。

 

Q. 甘草の成分であるグリチルリチンがとても甘いことと、根で土からの外敵から身を守る役割とには何か関係があるのでしょうか?

A. グリチルリチンなどのサポニンという物質は細胞膜を壊してしまうので、それによって外敵に対する毒性を発揮しているものと考えられます。グリチルリチンが甘いというのは、私たち人間が甘いと感じるだけで、必ずしも毒性とは関連していません。

 

Q. 例えばまだ知られていない植物成分を発見するなど、新しいことを生み出すためにはどんな心構えが必要だと思いますか?

A. 天然には人間の知恵や知識を超えるような成分があるということを謙虚に考えて研究を進めていくことが大事だと思います。

 

Q. 植物成分の抗がん薬について、これらの化合物は合成でも作れるのでしょうか?

A. 合成でも作れますが、合成の方法は複雑で環境に負荷がかかったり有害な金属を使うこともあるため、天然の植物からの生産が今後より重要になってくると思います。

 

Q. 齊藤先生の考える植物の面白さは何ですか?

A. まだわかっていないことがたくさんあるところです。

植物には、私たちの未来にとって重要な新しい機能、新しい物質がたくさんあり、多くの価値が眠っています。それを利益のために使うのではなくて純粋な好奇心から考えていくことに面白さを感じます。

 

Q. 先生が今一番注目されている植物があれば教えてください。

A. 色々な種類の植物に興味があります。植物性タンパク質として大豆などが注目されていますが、このように私たちにとっての価値が明らかな植物にも興味があります。

<ご聴講いただきありがとうございました>

 

次回は秋ごろ開催予定でございます。どうぞよろしくお願いいたします!