今回も昨年に引き続き多くの方々にご聴講いただきました。関心をお寄せくださりありがとうございました。

一般の聴講者の方々だけでなく、佐倉南部中学校、佐倉高校、千葉大学教育学部付属中学校、幕張総合高校において、開催アナウンスを行っていただき、興味を持って集まった生徒の皆さんにも受講していただきました。

昨年に引き続き皆様に学びの機会をご提供できたことに事務局一同喜びを感じるとともに、講演いただいた江面先生に大変感謝しております。今後も学びの場を提供して参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

今回の講義について、ご興味のある方はぜひ、下部の「第2回佐倉サイエンスアカデミーレポート」をご覧ください。

 

なお、講義後のアンケートでは次のような感想、コメントをいただいています。

*感想・コメント(一部抜粋)*

・とても楽しい講義でした!少し難しかったですが、もっと興味を持って知りたいと思える内容でした。ありがとうございました。

・内容も面白かったですし、時間的にも丁度良かったです。

・この度は大変興味深い内容をご講演いただきありがとうございました。内容もわかりやすく、面白かったです。

・植物(農作物)の品種改良、特にゲノム編集に興味があったので、非常に興味深いものでした。とても参考になりました、引き続き充実した内容を期待しています。

・とてもわかりやすく解説頂きありがとうございました。お話を子どもたちへも還元できるような機会をつくっていきたいと考えます。

第2回佐倉サイエンスアカデミーレポート

タイトル:「ゲノム編集作物とSDGs」

講師:

筑波大学 生命環境系 教授

筑波大学 理工情報生命学術院 学術院長

筑波大学 つくば機能植物イノベーション研究センター 特別教授

江面 浩 先生

詳細な要旨はこちらの資料をぜひご覧ください!

<講義内容振り返り>

元々野生の植物は美味しくもなく、量も取れず、栽培が難しいということでほとんど我々は食べることができません。日ごろ我々が食べている農作物は、自然突然変異という形で我々にとって食べやすい、作りやすいという性質が現れてきたものを選び、その突然変異を品種改良(育種)の中で集積したものであることが、ここ数十年間の研究の結果分かってきました。実際には野生の植物と農作物はかなり異なっていて、農作物は人がしっかりと面倒を見る必要がある植物です。その代わり、たくさん色々な恵を我々に与えてくれます。

ゲノム編集技術は特殊な技術と思われてしまいがちですが、品種改良(育種)技術の1つであり、ゲノム編集技術によって農作物のピンポイント改良を高速にできるようになりました。この技術はノーベル賞にもなった技術ですので、皆で知恵を絞ってSDGs達成のために使っていきましょう。

<Q&A 講義中にいただいた質問およびそれに対する回答>

Q:GABAトマト開発する上で大変だったこと、そして開発した今だから言えること、やってよかったと感じるような瞬間はどんなときですか?

A:GABAトマトがどうしてGABAを蓄積するのかという基礎研究を実は10年ぐらい行いました。どの遺伝子にどのように突然変異が入ってどうなるのかというかなり細かい基礎研究が一番大変だったのかなという感じはいたします。

ゲノム編集技術の肝である「どの遺伝子をどういうふうにチューニングしたら農作物としてより良くなるか」という部分を見つけ出すのが一番大変だったのかなとは思います。

A:やってよかったなと思ったのは、実際に皆さんに食べていただける状況になって、食べていただいた方が、「なんだ普通のトマト、美味しいじゃないですか」と言っていただいたときが一番嬉しかったかなと思います。

 

Q:各国の規制に関して、国ごとのゲノム編集作物、食品の取り扱いについての違いはどのようなところですか?

A:200近い国がありますので全部把握しているわけではありませんが、今ゲノム編集技術を従来の突然変異技術と同じような形で扱いましょうという、北米南米はそんな感じだと思いますね。一方でヨーロッパのように、ゲノム編集技術はまだ新しい技術なので、とりあえず従来の突然変異も含め、遺伝子組換え作物の中として扱っていきましょうという国があります。日本はどちらかというとその真ん中ぐらいです。

ヨーロッパに関しては、他の国とあまりにも違いすぎるだろうということで今見直しが進んでいて、来年の第2四半期ぐらいにはヨーロッパに新しい規制が出てくるだろうということで、おそらく日本に近いような形の規制なってくるのではないかと私は期待をしております。そうすると世界的にこの技術が使いやすくなってきます。

最近では、アジアのフィリピンやインドのように一足先に日本と同様な規制になった国もありますので、ゲノム編集技術はこれからどんどん普通の突然変異育種技術として使われるようになるのではないかと思います。

 

Q:オフターゲット変異はどのくらいの頻度で生じますか、またそれを防ぐような方法はありますか?

A:国の規定があるため、届出をする際にオフターゲット変異が入らないかどうかというのを、できる限りの方法で確認を行っております。これはゲノム編集技術を使うときに遺伝子を切るためのハサミ(ベクター)を開発するのですが、そのハサミが間違って切れそうな配列というのは、バイオインフォマティクスでゲノムを全部眺めるといくつか出てきます。この技術を使って本当にその部分が切れてないことを確認して先に進めております。普通に交配しただけでもいろいろな突然変異が出るため、何が突然変異かわからないという状況で、調べ切ることは難しいため、オフターゲット変異は普通の育種と同程度というふうに思っております。しかし、調べられるところはきちんと調べています。

 

Q:トマト以外で考えている食べられる次の植物は何でしょうか?何かありますか?

A:今ちょうど国のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)というプロジェクトの第2期目があるんですけども、その中で我々はトマトでやったような技術をうまく活用して、他の代表的なウリ科の野菜、具体的にはメロンでできないかと考えています。

最近色々な日本のメロンを海外へ輸出できるようになってきましたので、バナナのように日本で収穫した高品質のメロンをうんと日持ちを良くして、輸出先のマーケットで売ることができないかと思い、現在ゲノム編集技術で輸出が非常にしやすくなる日持ちの良いメロンの開発に取り組んでいます。

<ご聴講いただきありがとうございました>

 

今後の開催情報につきましては、ホームページ、SNS等で発信していきますので、ぜひチェックしてみてください!