昨年に引き続きハイブリッド形式で開催した第6回佐倉サイエンスアカデミーは、過去最多となる約100名の方にご参加いただきました。誠にありがとうございました。
今回は佐倉高校の生徒の皆さんを中心にとても真剣に先生のお話しを聴かれている姿が印象的で、質疑応答でも鋭い質問があり、講師の先生からもこれからの将来を担う生徒さんを中心に熱いメッセージをいただきました。
皆様に学びの機会をご提供できたこと、植物化学(科学)の世界を知る一助となれたことに事務局一同喜びを感じるとともに、ご講演いただいた石川先生に大変感謝しております。
今回の講義内容にご興味のある方は、「第6回佐倉サイエンスアカデミーレポート」をご覧ください。
講演後には講義に関する質疑応答も行われました。参加者の皆様、沢山のご質問誠にありがとうございました。いただいたご質問、および、回答につきましても本ページのQ&Aに掲載していますので、ご覧ください。
佐倉市 西田三十五市長ご挨拶
(株)常磐植物化学研究所 立﨑社長ご挨拶
石川先生ご講演の様子
質疑応答の様子
佐倉市教育委員会 圓城寺教育長 結びのお言葉
講義後のアンケートでは次のような感想、コメントをいただいております。
***************感想・コメント(一部抜粋)**************
・研究の苦労話についても聞くことができ、リアルな雰囲気が伝わってきました。もっと研究の話を聞いてみたいです。
・これまであまり関わりの無かった分野の話でしたが、将来を考えるきっかけになりました。
・トレハロースのようなありふれた化合物にも意外な効果があるのだなと感じました。
・送粉共生系や絶対共生など初めて知った概念だったので非常に興味深く拝聴しました。
・今回の研究の共同研究者の方々のお話も聞いてみたい。
第6回佐倉サイエンスアカデミーレポート
タイトル:「植物に含まれる分子の不思議
~昆虫、動物と植物の関わりを分子から読み解く~」
講 師:石川 勇人(いしかわ はやと)教授
千葉大学 大学院薬学研究院 天然物創薬化学研究室
詳細な要旨はこちらの資料をぜひご覧ください!
植物の中には、多種多様な分子が含まれています。
それらの分子は、長い進化の過程で生み出され、周囲の動物や昆虫と相互に影響を及ぼしあいながら機能しています。本講演では、石川教授らが最近解明した、分子が生み出す不思議な現象についてご紹介いただきました。
<Q&A いただいた質問およびそれに対する回答>
たくさんの興味深いご質問をいただき、ありがとうございました。
下記に一部抜粋したものを掲載いたします。
Q:カラスキバサンキライの香り成分の様に人間の嗅覚などで感知されない物質や濃度であっても、生理作用を示すといった化合物は他にあるのでしょうか?
A:いわゆる昆虫フェロモンと言われる香り(有機化合物)のほとんどはヒトでは感知できず、昆虫だけが反応する化学物質です。驚くべきことにメスがオスを呼び寄せる性フェロモンなどは数キロ先まで届くと言われています。
Q:絶対共生の起源は、どこにあるんでしょうか? いつ頃から、どのように始まったか? 滅びた共生もあるのか?
A:進化というのはいわゆるトライ&エラーの繰り返しです。おそらく太古の昔から絶対共生関係は築かれていたのだと思います。ただ、お互いに依存する相手が一種類であれば、例えば、気候の変化でどちらかの数が少なくなるだけで、相手は絶滅の危機を迎えます。すなわち、そのような絶対共生関係で成り立つ生き物が現代に滅びずに生きていることが大変興味深いと思っています。
Q:ダンゴムシのフンからトレハロースを特定するまでに時間がかかった理由は?
A:トレハロースは2つのグルコースが対称型の構造を有しているため、分光学的なデータが一つ分しか観測されませんでした。通常、このような問題は質量分析装置で分子量を測ればわかるのですが、トレハロースは1,1-グリコシド結合という二量化している部分が非常に弱く、私たちが使用した質量分析装置の分析条件では分解してしまいました。もっと色々な質量分析装置でとるべきであり、我々が最初に測定した質量分析装置を疑うまでに一年以上かかったということです。
Q:ダンゴムシがトレハロースを作り出す理由。なぜ代謝で作られるのでしょうか?
A:植物がトレハロースにさらに他の分子が結合している化合物を持っていて、それをダンゴムシが分解して、トレハロースになっていると考えています。なぜ代謝で作られるのかは不思議ですが、残念ながら、植物に含まれている化合物の全容が見えていないので現時点ではなんとも言えません。ダンゴムシが消化できずに流れてきたトレハロースに、オオバコの種が反応している、という認識をしています。
Q:野生と栽培のオオバコでダンゴムシのフンに発芽抑制の有無の違いが出る理由は?
A:これは本当に面白い現象だと思っています。栽培すると、植物はストレスなく成長できます。野生で植物が受ける環境ストレスが、植物が溜め込む物質に変化を与えているということだと思います。今後研究していきたいポイントです。
Q:トレハロースの発芽抑制はオオバコ以外の植物においても一般的なものか?
A:少なくとも我々の実験では、カイワレ大根やブロッコリー、シロイヌナズナなどの種子の発芽は抑制しています。普遍的なものかどうかはメカニズムの解明と、そのメカニズムが植物普遍的かどうかを調べる必要があります。
Q:線虫がL型とD型の光学異性体を識別する受容体を持っているのか?
A:その通りだと思います。人間も線虫も構成するタンパク質がL-アミノ酸という光学活性化合物で作られていますので、識別するということです。
Q:研究のきっかけとなるような発見をするとき、どのような視点を持たれていたのか ?
A:私は有機分子(有機化学)が大好きすので、いろいろな話を聞いた時にこの現象には有機分子が関わっているのかどうかを常に気にしています。匂いが有機分子である、という事実を知っているかどうかで、ものの見え方がまるで違います。そういう視点を大事にしています。
Q:研究には、どのような学問に精通する人々がどのくらい関わっているのか?
A:私は天然物化学、有機化学ですが、共同研究者には生態学、生物学、物理化学、計算科学、遺伝学、医学、民俗学など多数の共同研究者がいます。様々な分野の話を自分の専門領域で解釈するということがとても重要な共同作業であると感じています。
Q: 研究をしている中で、行きづまってしまったことがあったときに、どのようにして解決しているのか?
A:自分で思い悩むことも時には大事ですが、私の場合は、ともかく頭のいい共同研究者や時には学生さんと話をして、解決策を模索します。話し合うことがいちばんの解決策だと思っています。
Q: 調べるきっかけはどこから見つけているのですか?
A:いろんな人の話を聞いて、たくさん本を読んで、興味や疑問を持つところからです。たぶん、皆さんと感性はほとんどかわらないのですが、常に有機分子との関わりは?という切り口を持っているので、新しい研究に繋がっているのだと思います。
<ご聴講いただきありがとうございました>
今後の開催情報につきましては、ホームページ・SNS等で発信していきますので、ぜひチェックしてみてください!
